伝紋ws×Guest Talk報告 「乾聰一郎氏をお迎えして」
3月24日(水)スタンダードブックストアカフェにて、奈良県立図書情報館にて「ふだん図書館に足を運ばない人にも図書館に来てもらうために」とさまざまな取り組みをされている乾聰一郎氏をお迎えして、第3回伝紋ws展覧会のイベントを開催。
乾氏は「宮仕え(公務員)」というお立場。「今度はここで働いてねー」という辞令が出れば、世界史や倫理を若者に教えるお仕事から、新しい建物の建設準備という仕事に就くこともあれば、その開館準備のお仕事から広報の仕事に変わることも。この日、これから職業生活をスタートさせる20代の学生中心の会場に向かって、乾氏はこれまでのご自身の経験をもとに「やりたいことの見つけ方」というテーマで丁寧にお話してくださった。用意してくださったプレゼン資料を拝見すると、どれこれも華麗なお仕事の数々である。
職業生活のなかでは、日々与えられる環境が必ずしも自分がやりたいと思っていたことを実現するのにぴったり合致する環境ではないこともある。与えられた環境のなかで自らと向き合うことによって、自分のやりたいことの延長線上に仕事をつくりだせると、喩えをまじえてゆっくりと、けれど力強く。
ピンク色の雲のような満開の桜の美しさも素敵だが、木に近づいてよく見ると、満開の桜とは異なる風情で輪郭をもって浮かび上がる一輪の桜を見つけることも素敵。また、仮に自分の好みじゃない家を建てることになったとしても、屋根裏にある梁や柱に刻まれた落書きのように、ひそかに自分の想いのたけを刻むこともできると。実際にプロジェクトのお話を聞いてみると、華麗なお仕事を実現させるまでには全てが順風満帆ではなかった様子も併せてお話してくださり、失礼ながら妙な親近感を覚えた。
乾氏はご自分が「おもしろそう」と感じたことを、自分になじみのない事柄であったとしても、さまざまな専門家の力を借りて「人を集める」ことでひとつずつ実現させていらっしゃる。「人が集まる」ことで発想が拡がり、試行錯誤の段階でうまくいかないことがあれば、「ごめんなさい」と言える力があればいいと。確かに、仕事ではプライドが邪魔をして「ごめんなさい」を伝えるのは難しい場面を何度も見た。また、例えば「10人が集まる」と、10人が互いにコミュニケートすることによって新しい意識や発想がうまれ、もともと10人がそれぞれに持っていた意識の総和とは異なる意識や発想に変質していることは、アイデア創出セミナーなど小さなグループのなかで実感してきたことにつながりがあるなと。
会場から飛び出した「僕、今日彼女と別れてきましたが、乾さんにとって友達や恋人はどんな存在ですか?」とのサプライズ質問に、たとえ親子であっても異なる人格ゆえお互いを完全に理解することなど不可能なので、理解できないことを前提に議論を尽くすことが必要だと、コミュニケーションの意義についてもお話をしてくださったが、この態度は職業生活のなかで難しそうに見えることもあきらめずに「やりたいことを見つける」乾氏の態度と通底しているように思えた。
トークイベント終了後の飲み会にも、終電時間頃までおつきあいいただいた乾氏にただただ感謝である。乾氏のお話は、20代の若者だけではなく、一部参加した30代・40代の参加者にもじわじわと染み渡った。20代の若者たちがこれから日々出会う事柄に、乾氏のお話との接点を1つでも見いだしてくれればよいなと、40を前にして惑う私は思うのである。
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