現場の身体感覚

ヒトの脳は「身体の省略という美味しい『芸当』を覚えた故に、身体性を軽視しがち…」と池谷裕司先生はおっしゃっています。身体を動かさずに、頭の中だけで済ませたほうが楽なのでしょうね。いわゆる会議なんかでは、みんながきちんと座って、身体を動かさずこの「頭」で考えたことを表現すること「だけ」で議論が進みがちですが、これが商品・サービス開発がテーマの内容だと非常に危険。その危険を「見える化」して回避するのがデータの役割のひとつ。しかし、データをどの切り口で集めるのかという関門も生じます。

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私がこの「切り口」を考える際に必ずチェックするようにしているのが、身体性に関わる感覚項目、つまり「視・聴・味・臭・触」。具体的に商品・サービスを買っていただく可能性のあるお客さんを想定した場合、このような感覚項目がどのような状況で商品の購買や評価に影響するのか?仮説がいりますね。となれば、やっぱり意思決定過程に影響する「現場」の理解が必要です。

私がとにかく「現場」を重視する理由のひとつは、商品・サービスの購買や評価に際し、身体性に関わる感覚項目が影響する度合いが高いにも関わらず、重要な要素として斟酌されていない場合が散見されるからです。

これらの感覚項目は「無意識」ベースで購買や評価に秘かに影響する場合が多いので、言語やデータとして適切に表現されにくいことが第一の障壁。さらに、身体性に関する切り口って、何せ感覚なので表現してみると、オノマトペの連打となって(ギラギラ・ガンガン・ねっとり・きな臭い・ふんわり…)、うーん、語れば語るほど論理性とは程遠くなり、聞き手に「愚か」な印象を与えかねない?!もちろん、知能の高低に関わらず人間自体がそれほど論理的じゃないことを考えるとそれが現実なのですが…。これが第二の障壁になります。

たとえば身体性の重要性に気づいた「デキル人」が、そうは言うものの「デキル自分を見せたい」バイアスがかってしまう職場のプレゼンや会議なんかで、感覚の重要性を力説するうちに「自分が感覚だけで生きている無能?な存在に思われるんじゃないか(汗)」などという評価懸念が生じるかもしれません。このような心理メカニズム自体が障壁になりうる…。

というわけで、二つの障壁のお蔭で(?!)、「身体性の影響に関する仮説づくりのための現場訪問」、実践してみれば何某かの収穫があります。
そういえば、学校での講義させていただく現場が近々にあります。どんな発見や収穫があるんでしょう。仕事での現場ばなし、商品・サービスの潜在購入者が示す「興味のシグナル」の小話も入れてみようかな(緊張して忘れていなければ:笑)。

西道広美