要領の得ない現場

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早朝からはす向かいのマンションの外壁工事のための足場組が始まった。

足場を組むための金属音は致し方ないとして、朝から罵倒しづづける人間の声。

二杯目のコーヒーはただ苦いだけで不味かった。

 

ふと見ると、作業責任者とがおぼしき人物が「要領の得ない」作業員を、

「要領の得ない」指示で罵倒し続けている。

罵倒され続けている作業員に目をやると、たしかに、身体の筋が通って折らず、

手元もおぼつかない。

罵倒されるのもさもありなん、

そう思った瞬間、なんとその作業員は、足場に使う金属のポールを

手をすべらせて4階の高さから地面に落とした。

けたたましい金属音が近隣に鳴り響く。

通行人がいなかったのが不幸中の幸い。

それにしても、ああ、危ない。

 

「要領を得ない」指示の下で、「要領を得ない」人間が動く、この組み合わせ。

危険を孕む現場で、まともな仕事などできないだろう。

とにかく、はす向かいのマンションにはしばらく近寄らないようにしよう、と思い、

娘にも注意しておこうと心づもりする。

 

それにしても、この組み合わせ、どこかに似ている。

 

原子力発電所の事故の処理、

今まで人類が経験したことのない現場作業だらけだと聞く。

ならば前提として、作業の指示は「要領の得ない」ものが多くなるに違いない。

 

さらに、

被爆の限度が決まっているゆえに、原子力発電所では、表向き上、

真の「熟練労働者」を生みだすことができないということが言われてきた。

よって、この現場では作業員にとっても常に「要領を得ない」作業が前提となる。

 

要領を得ない指示と要領を得ない作業。そういうものの危険は、日常レベルならば

簡単に察知して避けようとする自分だが、

もっと大きな枠組みで避けようとすると、ただただ非力な自分がいる。

 

巨大システムとして生み出された危険に対しては、結局、

ひとりひとりの人間のレベルでは、マンションの足場工事をさけるように、

「遠巻きにする」ほどの危機管理しか方略がなく、

なにか本質的なシステムを構築して対抗する用意がないというのが現実である。

 

「危機管理システム」をということばが、どこまでも虚ろに感じ、

それを誰にどんな風にまかせてきたかということに、心が曇る朝。

 

 

 

 

 

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