到達点と幅

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一に一を加えて二になる。

これは算術である。

しかし、ヴェクトルの数学では、1に1を加える場合に、その和として、

0から2までの任意な値を得ることができる。

美術展覧会の審査には審査員の採点数を加算して採否を決めたりする。

あれは算術のほかに数学はないと思っている人たちのすることとしか思われない。

                          「柿の種   寺田寅彦」

 

哲学と科学の間を行き来しようとする科学者はそんなに多くはないということを、

今回の震災の後、特に原子力発電所関連のあれこれで思い知らされ。

多くは、「自己利得を中心とする経済効率至上主義技術者」だったわけですね。

寺田寅彦は数少ない「行き来する」科学者だったと思い、「柿の種」を読み返してみたら、

上の一節にしばし考えさせられた。

 

もう年齢的に、社会的にみればかなりの地位になっている人も周囲に増えてきたので、

ついつい、「高さ」において、同程度にある人を比べてしまったりするわけだけれど、

1に1を加える結果が算術の結果の2でしかない人と、ヴェクトルにおける2までの任意な値をとれる人と、

最高到達点は同じ2であっても、ずいぶん印象が違い、できる仕事の幅も違うだろうなと思う瞬間がある。

 

キャリアとは到達点を高くする問題ではなく、到達点を高くすることによって、幅を大きくすることだと

わかっている人の元で働ける人は、幸せなのかもしれない。

 

 

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