フランクシナトラが歌って大ヒットとなった、Fly Me To The Moonは
ちょっと前にエヴァンゲリオンでも使われた名曲。
Fly me to the moon
And let me play among the stars
Let me see what spring is like
On Jupiter and Mars
In other words
Hold my hands
In other words
Darling kiss me
Fill my heart with song
And let me sing forever more
You are all I long for
All I worship and adore
In other words
Please be true
In other words
I love you
大筋は、
第一節: あなたという男性は多大なリスクを取って未踏の地のすてきな資源を、女性である私に見せて、
第二節: (In other words) そのリスクをとれる、あなたという男性を得られるのは、女性の中でもこの私だけだから私に近づいて、(In other words)他の女性とは違う位置づけにして。
第三節: 女性の私が長い間コミットできるに値する価値をあなたという男性は持ち続けて、
第四節: (In other words) そういうあなたという男性が私だけにほんとうにコミットしてくれるのなら、(In other words) 女性の私はここではじめてあなたにコミットするわ。
ということなんだけど、In other words の使い方が、この曲を「呪文のうた」とするために秀逸な働きをしている。
ホントは、In other words (言い換えると)に続く内容は、単なる前の文章の説明にすぎないはず。
ところがここでの使い方は、ある高い理想型を押しつけた後、「In other words=そのつもりがあるのならば」という特殊な条件節に転換されて、具体的な「私へのコミットメント」の方向へとひきずりこむためのアクションが次々と指示され、 最後のIn other words が唱えられると、アクションが集結し双方コミットに至らしめる。
In other wordsをフツーの語法で結ぶならば、こうはならんはずである。
歌のスケルトンは、
限られた数のリプロダクションしかできない雌が、最大資源を持つ能力の高い雄を見定めて、挑戦させ、自分に近づかせ、最大限コミットさせ、確認してから、自分もコミットする、という究極のやりとりがここに凝縮された非常に野性的な(無意識的目的性の高い)内容。
はっきり言って身も蓋もない筋なんだけど、月だの水星だのというメタファーと、In other wordsで、「野蛮な感じ」が払拭されるどころか、シナトラがあの声で歌うと、なんともいえずロマンチックに感じさせちゃう。
呪文に閉ざされた無意識的目的性があからさまにならないからこそ、大衆は、この曲になんだか気持ちよくとりこまれる羽目になる。
さてさて。
無意識的目的性を潜ませた呪文を唱えて、商品を売るのがマーケティング手法として一つの秀逸なやり方。
そのために行われる、 ひとびとの日常の(野生の)思考をひきだし、ひもとくことが私の仕事でもある。
そんな仕事のベースとして、レヴィ・ストロースの「野生の思考」をさっき読み返してたら、「無意識的目的性」なる表現に出会う。
そして偶然、バックにFly Me to The Moonが流れていた。
けだるい日曜の午後である。
歌詞を追っていると、は?と気になり、とんだ脱線をしてしまった。
いや、しかし、 調べてみると、
フランクシナトラがあの甘い声で、野性的呪文炸裂の歌、Fly Me to The Moonを、当時、大ヒットさせたのが、1962年。当時アメリカは、底抜けに明るい科学的合理性をバックボーンに豊かさを享受していた。
同年、奇しくもレヴィ・ストロースの「野生の思考」が世に出たのだった。
うーん、粋な組み合わせ。
なんだか発見、であった。
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