第二話:その3 購入意向あれこれ 「購入意向率」
「購入(購買)意向率」、自分(たち)の作ったモノ・サービスと引き替えにお金が欲しい人には魅力のある響きですね。それさえ良ければ世界がバラ色に見えるような魅惑の数値。ネットを「購入意向」で検索してみると、ありとあらゆる「購入意向」が出てきます。いわく、①「○○の購入意向は何%」、②「○○の購入意向は△△と比べ倍の高さ」、③「○○の購入意向と売上の関連を見出しました」等々。どれも自分のビジネスに関連するテーマなら、どっきりさせられるのも無理ないことでしょう。購入意向率を含めた内容をプレゼンテーションする機会があると、売ろうとしてるモノやサービスの購入意向の部分しかお聞きにならない方もいらっしゃる。確かに、売れるかどうかなのでそこは肝ですよね。でも、そこだけお聞きになられても、何もわかりません。今日は、購入意向という数字の扱いについて。
①「○○の購入意向は何%」には何の意味もない
購入意向はベンチマークがあってこそ意味があるものです。数字単体では何の意味もありません。同じ調査の競合の数値と比較して、はじめて高いか低いかわかる。なので、異なる調査間で「○○の購入意向は何%、△△の購入意向よりも高い」というためには、対象となった調査が、調査手法・サンプル構成、調査質問が標準化されており、時系列で比べることを前提とした調査なら、異なる調査の結果と比較できる。この場合、調査時期の問題をどうカウントするかということは調査対象によります。季節商品なら、つい二ヶ月前の購入意向でも季節に影響されるので、その要因を排除できない以上、フェアに比べることはできません。異なる調査会社の調査結果は、もちろん比較なんかできません。調査手法・サンプル構成・調査質問が同じであることはないからです。
そもそも購入意向という尺度に決まった問い方はありません。調査主体毎に違うのです。高い購入意向を出そうと思ったら、尺度の項目を少し工夫すればよい。そういう意味で、「購入意向」は質問項目の内容コンセプトであって、「尺度そのもの」ではありません。なのに、「○○の購入意向は80%!!!」という非常に高い数値を叫んでいるものもよく見かけますよね。これはセールス目的。
よくよく見れば尺度の内容が、
「①買うことを検討するだろう・②たぶん買うことを検討するだろう・
③たぶん買うことを検討しないだろう・④買うことは検討しないだろう」、
ぐらいの非常に緩い内容で、①と②を合計して購入意向率と呼んでいる。
そりゃ数値が高くなります。
たとえば、フィートとセンチならば、名前の違いで異なる尺度であることはわかります。
さらにフィートとセンチならば両者の関係は定義できます。
しかし、購入意向の場合は、異なる購入意向尺でも「購入意向」という同じ呼称になり、
なおかつ、同じ呼称ながらも異なる購入意向率同士の関係は分析してみなければ不明です。はっきり言って非常にアヤシイ世界です。
で、誰に調査を行ったかというベースを見ると、「この商品のサンプル使用者の中で」なーんていう、そもそも商品に対して好意的な人たちの中での数字だったりします。一般の人じゃなかったのね、そりゃ高い数字が出るでしょう。くれぐれもだまされないようにしましょう。セールス目的の場合は、そういうことがすごーく小さい数字で書いてあり、読むと笑える内容のことが多いです。
②「○○の購入意向は△△と比べ□倍の高さ」の誤解
では、比べられる調査間で二つの数字があったとして、どう比べるのが正しいのでしょうか。基本的には比率の差だけで述べることです。「○○%の差がある」、これだけです。注意しなくては行けないことは、購入意向は、比較して何倍であるかということの統計的処理に耐えるような尺度ではありません。この延長線上で、さらによく見られる誤解としては、そもそも、「□倍の購入意向」ということを考える時点で、□倍売れるというを想定されていること。これはもちろん間違っています。たとえば、商品Aの購入意向が商品Bの購入意向の二倍であるということは、他のすべての条件が同じだとしても売上が倍になるということを約束しません。何かの関数関係が想定されたとき、商品Aの購入意向が商品Bよりも高い可能性はあるが、それは二倍である可能性は限りなく低いでしょう。でも購入意向が高いと、どうしても、割り算して「何倍」って言いたくなる。わかりますが、だからといって何?ってことがわかった上での遊びならばもちろんOKでしょうが、ビジネスの判断材料にはなりません。
③「○○の購入意向と売上の関連を見出しました」は、その提供会社と長期的につきあう価値があるか検討が必要
購入意向そのものを売上と関連させるために、他の要因も含め何らかの関数関係を見出して安定性のあるモデルを作ったとする、それ自体が商品になるので、こういう売り込みがあります。このタイプの商品にもいろいろなものがあります。購入意向だけでなく、売上に関連するさまざまな要因を入れ込んで作ってあるのが売上予測モデルなので、検討すべきポイントは、購入意向と売上の関係だけではなく、その他の要因がどのような考え方で選択され、どのようにデータが集められてどのように信頼性と妥当性が検証されているかということです。売上予測モデルは、簡単に言うと、ビジネスモデルを数値化して関数の形にしたものです。裏を返せば、売上予測モデルの前提になっているビジネスモデルが自社のビジネスモデルと比べて、何が同じで何が違うのかを検討することが重要です。このテーマについては、単なる購入意向を超えることなので、またいつか気が向いたときにカバーすることにしましょう。いずれにせよ、一つの売上予測モデルを決めるとそれにそった調査をすることが必要になるので、その提供会社に長期にコミットすることを前提にしないと価値が得にくくなります。長期な投資ですよね。で、単発だと、その場しのぎの無駄になります。うまく選択すればビジネスに役立つものなので、慎重な選択が重要です。
というわけで、購入意向がらみ3連発。つらつらでしたが、いかがでしたか?
来週のテーマはどうしようかなー。考え中~。
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