家から道路を渡ってすぐが四天王寺。 読書の秋、四天王寺の古書市風景。
古書市を出してるおじさんたちが寄り集まって、商売談義。
「いくらええ本でもな、売れへんもんは、ほんまはええ本ちゃうで。こっちがそういうつもりだけでな。」
「そやそや。なんや、売れるすじっちゅうもんがなあるわな、場所やったり、日ぃやったりしてな、お客さんがちゃうようになるから。」
と話しておりました。思わず「私もよしてーな」と言ってみようかと。ま、でも変なおばちゃんと思われるだけかと思い、ここは断念。
四天王寺の市は、少なくとも300年の歴史があるそうな。
売り手買い手によってずれるモノの評価と、売れ筋、環境や買い手にあわせて商売をすることの難しさについて、きっと昔から変わらん問わず語り。
なんで売れるやろ、なんで売れへんのやろ?
このあたり、調査の文脈では「購入意向」のお話しと関連しますね。 というわけで、 第二話は「購入意向」について。たぶん、一回では終わらないので、その1として。
マクラが長かったので、今週はちょっとした前振り程度?! ですかね。
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第二話 その1:購入意向あれこれ 「調査では買わない理由をしつこく聞くな」
調査は売れる理由を知るためよりも、売れない理由を知るためにすることの方が多いですね。
「売れん理由をわからんから、金払って知ろうっちゅねん!」 はい、ごもっとも。プレッシャー満載状態です。
で、調査対象者となってくださるお客さんにそのまま聞きたくなる。
「どうして○○○をお買いにならなかったのでしょう?」
今日はこのテーマについて。
お客さんは大なり小なり、自分の欲を充たすためにお金を出してモノを買ってます(ニーズという言葉よりも、「欲」の方がはまる、と個人的には思います)。
とにかく、人間は欲深いので、モノを買うときもいろんな意味でケチ。
単にたくさんのお金を出す、出さない、という問題のケチ、つまり、その商品がその値段の価値があるかどうかを考えるという意味でのシビアさだけではなく、
モノを買うときに、それ自体が楽しいこととなる場合を除いては、お金だけでなく、頭を使ってモノについて情報処理することもシブることもケチのひとつです。
モノが買われる、ということに至るまでには、①きちんとそれが世の中にあることの「存在」を認知してもらい、②それが自分に何をしてくれる、どんなものであるか「便益と姿」を認識してもらい、③便益と引き替えの価格等々その他のポイントを含めて判断しつつ、代替可能性のある商品と比較検討なんかも適当にやりながら、やっとこさ買ってもらえる、こんな感じで少なくとも3つのステップが存在するでしょう。
なんと大変な情報処理。ああ面倒!とっても買いたいもの以外なら、やらずに済ませたいでしょう、はっきり言って、かなりスキップして、ええ按配で決めしまっているでしょうな、そりゃそうでしょう。
で、買うんじゃなくて、その逆、なぜ買わないか、でしたよね。買うまでには結構な情報処理をある程度がんばってこなしたに違いないから、買わない場合にも、そう決めた筋道があるんだろういうことで、たとえば質問紙調査でそのまま聞けば答えが出てくるのか?と。そうですかね。
あ、そうそう、最近の調査のほとんどを占める留め置き型(ネット調査もこのパターン)の質問紙調査では、調査員による調査のようにプローブ(つっこみ質問)ができません。文章による指示にしたがって、回答欄を埋めてね、という回答者おまかせ形式です。選択質問の回答パターン等、ごく基本的なロジックチェック以外はほとんどフォローされません。
よって、①「書き逃げ(適当なことを書いてよしとする)」、②「○あるいはチェック逃げ(選択肢を適当に選んでよしする)」が回答に混ざりがち。ちなみに、書き逃げ現象は、留め置きタイプの調査の宿命です。そうならないよう、コストをかけていろいろ工夫して、質が仮に向上したとしても証明することができない以上、だれも価値を認めませんから。 かといって、調査員によるプローブを含む量的調査は通常行う手法としては、お金がかかりすぎてほとんどムリでしょう。②は量的調査全体の宿命ですね。
で、そうなると、特に、留め置き法で調査した場合、
なぜ買わないか(=「何でオレ様とつきあわないのか」みたいな、直截的かつ恥知らずな質問→あっ、ちょっと下品でしたかね、でもとっても適切な例です)の回答は、①書き逃げ(の宝庫)になりやすいです。
なぜ買わないか、ということが比較的明確かつ具体的に答えられるのは、買わないことを積極的に選択した場合です。例えば、①その商品の使用を含むテストをして購入意向を聞いた場合と、②ある商品をしげく使っており、最近、それを買わなくなったり、別の商品に変えたばかりの場合ぐらいでしょうか。それ以外は、非常にぼんやりした回答になりますね。
で、出てくる書き逃げタテマエ回答例としては、
「1)今の商品で満足しているから。2)ネダンが高いから。3)店頭でみかけないから、4)何がいいのかよくわからないから。5)なんだか○○○がよくなさそうだから」
ってな内容が書き込まれる感じかしらん。
本音のつぶやきは、たぶん、
1)「今の商品で満足しているから。」
→「アンタの失礼な質問から私は早く逃げたいの。今使っているものが満足かどうか、あんまり深く考えたことないけど、そう答えとく。」
2)「ネダンが高いから」
→「高いって言っとけば納得してくれるから。」「覚えている内容の割には高いんじゃないかと思ったのでそう答えとく。」
3)「店頭でみかけないから」
→「とにかく面倒なんだから、お店でいろんなものをいちいち細かく検討しようという手間をかけてないのよ。お店にあるかもしれないけど、ないことにしとく。」
4)「何がいいのかよくわからないから」
→「なんか、こう、印象が薄かったのよね。もちろん、きちんと考えたり比較検討したわけじゃないけど。」
5)「なんだか○○○がよくなさそうだから」
→「ぱっと見たとき、ここにひっかかったから、これが理由なことにしとく。ちゃんと考えたり比較検討はしなかったけど。」
ま、独断と偏見をお許し頂くと、回答の本音はこんな感じではないかと。
比較的、4)と5)は改善のヒントにはなるでしょう。4)は便益が伝わっていない、5)はコミュニケーションのどこか(成分名等)に問題があったことを示唆するからです。2)の価格の問題は、4)の便益がわかっていない状態で答えているとしたら、そういう回答が出やすくなります。メリットがわからない商品はすべて価値が低く、よって値段が高く思えるものです。3)は、そもそものブランド力の問題、配荷の問題、ディスプレイの問題、パッケージの問題いろんな問題が絡んでいますね。問題の領域は想定できますが、問題の特定はできません。1)はシンプルに検討してもらっていない、ということだけがわかります。
なので、結局、負荷をかけて回答を書いてもらっても、便益が理解されていないかも(よって価値も理解されていないかも)、コミュニケーションに問題があるかも、店頭でのプレゼンスに問題があるかも、そもそものブランド力に問題があるかも、というばっくりした問題領域がわかるだけです。別に、こんな内容なら、マーケティングの要素としてわかっていることですので、個別の問題レベルをきっちり聞いた方がいいですよね。もしかして、同じ調査の他の設問にすべて含まれている内容じゃないですか?
そもそも「買わない」という事象は「買う」、とちがって、「買わない」というきっかけが明確でないのです。「気がついたら候補から外れていた」という按配。ですので、買わない理由を捜すために記憶をさかのぼっても、「候補から外れた瞬間を想起するのは非常に難しい。買うに至った商品の理由がだいたい明確になったとして、その理由の要素について、買わなかった商品がすべて比較検討されているとも限らない。
一方、商品を買おうという気が起こったときは、この商品でいいや、と自分自身を納得させるために良い点を選択して認識するという、「納得のための情報処理」があるので、これは他の商品と比較されない場合が多いのです。
つまり、
日常生活で普通に使われている商品(たまにしか買わないモノを除く)について、よっぽどでなければ(なんかこれまでにエライ目にあったとか)、
「この商品が買われていないのは、その他の代替可能性のある商品と比較検討した上で買わないのだ」という思い込みは捨てるべき、ということです。
情報処理という負荷のコストを人間はケチるのです。
買われていない理由は、まともに情報処理してもらっていない! ので、買わない理由なんか、ほとんど何も考えていないんでーす。
お客さんはほとんど何にも考えていないという前提で、売れない理由を探らなくてはならないのです。あー大変。
だから、留め置き型の質問紙調査なんかで、「どうして○○○をお買いにならなかったのでしょうか」と聞いても、書き逃げの嵐に紛れてしまい、売れるようになる理由を引き出すことはできません。
ここまでは量的調査のお話しでしたが、質的調査、たとえばフォーカスグループなんかのインタビューでも、この質問、そのまま聞くと、せっかくお越しのお客様予備軍対象者の方々に思いっきり退かれますよ。だって、そりゃ、「何でオレ様とつきあわないのか」って面と向かって言われているのと同じことですから。きゃー、厚顔無恥だこと。
たとえばあなたが雇っていらっしゃるプロフェッショナルな司会者さんが、先ほど述べた「明確に買わない理由が述べられる二つのケース」以外で、フォーカスグループで、あなたの依頼どおりに、「では、あなたはなぜ、この商品をお買いにならないのですか?」とそのまま聞いてくれたとしたら、
それは純然たるクライアントサービス! です。
じゃあ、どうすんのよ。
愚直な話になりますね。なので、続きは来週。
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