護る(まもる)

| コメント(0)

赤坂見附から永田町駅につながる坂道、衆参両議院の議長公邸が並び佇んでいる。衆議院議長公邸はコンクリート壁で覆われ中は見えない。参議院の方はなぜか庭が鉄柵で囲まれており、蝉が大音響で鳴く庭の様子が歩道からうかがえるつくりになっている。

庭の鉄柵にすり寄るように歩道を歩く。日中でも柵沿いの庭は木々が茂り直射日光が差し込まない。しばし炎天下のアスファルトの歩道を歩いてきた私は、庭木の枯れ葉が朽ちて地面から漂うにおいをかすかに嗅ぎ取り、冷たく湿った空気を吸い込んで日陰を楽しんだ。木々の根元に目をやれば蝉が羽化のために這い出てきた穴が一つ。別の穴を目が勝手に探す。ぽこ、ぽこ、ぽこ。 蝉の蛹は夜になると静かに、しかし渾身の力をこめて土を押しのけ地上に這い出て、いちばん近い幹を上って羽化するのだ。夏の終わりまで毎晩。

永田町までの坂道。3メートル幅ほどの歩道をゆるゆる登る。

直射日光が照りつける車道側の歩道すれすれにさきほどからなにやら大声で叫びながら街宣車の一群が通る。車道と歩道の際にころがった蝉の死骸が、街宣車が一台通過するたびに風圧でからから回る。

ふと顔をあげて視線を向こうにやると、坂道の庭側少し先に国会議事堂へ通じる交差点が見えた。警備の配置を変えるタイミングなのか、二人の警官がざっと動いて一瞬止まった。車道側の歩道と庭側の歩道の両端に一人ずつ。視線もそれぞれ車道側と庭側に向けて。

二人の間に短いが確かに存在する距離と異なる方向への視線。相容れない正反対の立ち位置。

何かを何かから「護る」とき。

それぞれに異なるスタンスについての思いがふとよぎった。

コメントする