空気抵抗としての伝版

| コメント(0)

「まるで軽やかな鳩が空気の中を抵抗なく飛び回れるようになると、真空の中ならもっと楽に飛べるのではと想像するようなものである」 

(カント 純粋理性批判序文)

「白い紙にあなたの気持ちや考えを自由に書いてください」

「あなたの思いを自由に話してください」

なかなかに難しい話である。

それは、「鳩よ、この真空の中を自由に飛び回れ」と命じているからだ。

ならば、コミュニケーションの空気抵抗を作ろう。

それを、「コミュニケーションのための型紙=伝版」とした。

鳩の飛べない「真空みたいな白い紙」に、花や木、雲など、人間が存在する以前に存在した自然のモチーフを描いて、空気抵抗を加えてみる。

使われた伝版の中の表現を見ると、

与えられた制限そのままに、表現する人と、

制限を超えようとして、表現する人の2種類に分かれる。

興味深いことに、制限をまったく意識しないで表現する人はいない。

伝版の中のモチーフを意識することはつまり、制限に対する意識になる。

そこに描かれたモチーフを前提に表現の逸脱を試みている。

制限があるから、人はそれを越えようと思うのだ。

自分のことばが添えられた伝版を使って、発表してもらうと、

与えられた制限そのままに表現する人は、安心した様子で、

与えられた制限を超えて表現する人は、誇らしげに語ってくれる。

まるで、空気の中の軽やかな鳩のように。

コメントする