朝。家のベランダは朝だけ日当たりが良い。日当たりを選って置かれた鉢の、てんで勝手にのびた枝葉や、出張前よりも黒赤く色づいたトマトの実が半端に開いた窓から縦長に切り取られて見える。蝉とカラスの鳴き声。カラスが鳴くと雀はひそんで黙る。遠く野太いバイク音。室内は中途半端にたたまれた洗濯物、テレビを見ながら涼をとるために定位置から動かされた扇風機、捨て石のようにころがるいくつかの荷物と散乱した小物、そして直に命がつきるカブトムシのケースが端に佇む。
秩序をつけられる前の状態。朝の光が色と質感の見え方を刻々と変え、遠近のバリエーションにも富む。蝉とカラスもしくは蝉と雀のBGMをバックに、この風景をデッサンすれば、きっと面白いものになる。
当座の仕事として私はこれを片付けるのである。片付ける前に、片付けられるものをじっくり見てみる。片付けられるものにも価値を見いださなければ、片付けなんてやってられない。逆説的だが、解決される前の状態も慈しんでじっくり腹に落とさなければ、その解決は居心地の悪い解決になる。
コメントする