手描きパース

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伝版やひとふでんずのことをつらつらと考えながら本屋を歩くと、おもしろい本に出会う。建築にはまったく無縁だったけれど、最近、「手塚貴晴の手で描くパース」という素敵な本に出会った。パースとは遠近法を利用して描かれた図のことで、主として建築・インテリアなどの設計者やデザイナーが描く、透視図・完成予想図・デザイン画などのことらしい。手描きパースの描き方が、とっつきやすく、わかりやすく、シンプルながらセンス良く説明されており、この分野に関係ない人でも、思わず描いてみたくなる。やってみて、ちょっと描けるようになるとかなりうれしい。ちなみに、「とっつきやすく、わかりやすく、シンプルながらセンスよし」、これぐらいの数珠つなぎメリットがあると、門外漢をもひきつける、ということも、自らをサンプルn1として体験できた次第である。

ひとしきり遠近法の説明が終わった後に、「点景の描きかた」という章があり、その内容も目からうろこだった。傘の絵を組み合わせて、さまざまな枝振りの木を描く。傘をモジュールとして、妙にリアルな木々の点景ができていくさまは、なんだかいつも格好のつかない絵を描いてしまう私にエールを送ってくれているようだ。

最近はCADが当たり前になっているが、CADはあくまでも道具。かたちのありようとしては様々な可能性があるのに、手描きに比べてコピー&ペーストがいとも容易くできるようになったせいで、いつの間にか道具側のCADにコントロールされてしまったかのよう。「CADで描きやすいパース」が学生の作品にはごろごろしているらしい。また、CADのおかげで、手描きでは難しかった3次元曲面の屋根なんかも簡単に描けてしまう。なので、現在、3次元曲面形態の建物が次々と生まれているとのこと。ふーん、そうだったのか。

「しかし、大切なことはどのような曲線が作れるか、ということではなく、どのような曲線がその建物にふさわしいかということである。」と手塚氏は説く。

なるほど。

便利なものを得すぎると、原点を見失う。

どのような曲線がこの建物にふさわしいか、を決めるということは、頭の中にもやっとある建物のありようをひきだして、ひもといた結果としてできることなのだろうな。

ひきだし、ひもといてから、どのようにくみたてるかについての作業と時間を担保する手段が、「手描きでパースを描く」ということなのかもしれない、とふと思った。

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